top of page

1ms オートパン・チルト

 

 サッカーのワールドカップやオリンピックなど,スポーツのテレビ放映は人気が高く, それだけにより迫力がある,わかりやすい映像の撮影が求められている. 特にサッカーや野球などでは,球や人が激しく動きまわるシーンが多く, そのような動的な状況を安定して撮影することが必要であるが, カメラマンがこのような激しく動く対象にあわせてカメラを動かすことは難しい. そこでこれまでは,広い画角で視線をゆっくり動かしながら全体の状況を撮影するか, もしくはある程度予測に基づいてカメラの方向を変えて,たまたまうまく撮影できたシーンを選択的に放送するなど, 撮影可能な構図が限られてきた. 特に,注目している選手や球にクローズアップした超スロー映像等は迫力があり価値が高いが, このような画像をカメラマンが撮影することは不可能であった.

 そこで当研究室では,この問題を解決するために,1msオートパン・チルト技術を開発している. この技術は,ちょうどオートフォーカスが自動的にフォーカスをあわせるのと同様に,画面の中心に対象がくるように自動的にパン・チルト方向を制御する技術である. 卓球のラリーにおける球のように高速な対象でも,当研究室で開発したサッカードミラーと呼ばれる高速視線制御ユニットと,1000fpsの高速画像処理によって安定して追従でき,あたかも画面中央に球が止まっているかのような「1msオートパン・チルト映像」を記録することができる. サッカードミラーは,カメラ全体を動かすかわりに隣接する2つの小さな鏡を回転させることで視線方向を制御するもので,パン・チルト共に最大60度の視線制御が可能である. さらに,ミラーの高速性により,40度の視線方向の変更を3.5ミリ秒(1ミリ秒は1/1000秒)で行うことができる. また,小さな鏡でも大きな画角とフルハイビジョンの高精細画像に対応する光学系を開発したことで,ハイビジョン放送にも耐える画質を実現した.

 図1にシステムの外観写真を示す. また,実際の適用例として,卓球をしている様子の1msオートパン・チルト映像を図2に示す. この図はフルハイビジョンの高速カメラで500fpsの高速撮影したものを画像系列として示したものであり,ラリー中の卓球が常に視野中央にくる映像が撮影できていることがわかる. また,1msオートパン・チルト映像の動画がこのページ下部に示されている. 本システムにより,スポーツ放映における決定的瞬間をクローズアップしたスローモーション高精細映像として記録するなど,放送技術に格段の進歩をもたらすことが期待される. また,これまで難しかった飛翔する鳥・昆虫や,自動車・飛行機等の高速移動対象の詳細な映像記録・解析も可能となる.

*当研究室の教員が2013年度まで所属していた東京大学石川渡辺研究室のYouTubeを引用

図2 プレー中の卓球ボール撮影結果

図1 システムの外観写真

参考文献

  • 奥村光平,奥寛雅,石川正俊: Full HD画質対応超高速パンチルトカメラ,2011年映像情報メディア学会年次大会(武蔵野,2011.8.24)/講演予稿集,7-12

  • Kohei Okumura, Hiromasa Oku and Masatoshi Ishikawa: High-Speed Gaze Controller for Millisecond-order Pan/tilt Camera, 2011 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA 2011) (Shanghai, 2011.5.12) / Conference Proceedings, pp.6186-6191

  • 奥村光平,奥寛雅,石川正俊: アクティブビジョンの高速化を担う光学的視線制御システム, 日本ロボット学会誌,Vol. 29,No. 2 (2011)

bottom of page